設計事務所のCM
1、 設計事務所とデザイン
2、 デザインとコストの関係
3、 コスト分析の手法
4、 CM=分離発注?
5、 設計家がCMを行う
1,設計事務所とデザイン

デザインという意味は広辞苑から「生活に必要な製品を製作するにあたり、その材質・機能・技術・および美的造形性などの諸要素と、生産・消費面からの各種の要求を検討する総合的造形計画」、とあります。
これを建築(特に住宅)に当てはめると
「住宅を建てるにあたり、それを構成している材料性能・機能・技術・および美的造形性などの諸要素と、施主と生産者からの各種の要求を検討する総合的造形計画」となるのではないでしょうか。
 現在の建築業界における考え方に建築コストとデザイン性が相反するもという考え方が主流にあると私自身は感じていますがあながち間違いではないように思います。しかし私の考えは違います。

 デザインとコストは切っても切り離せない関係にあり、デザイン性を突き詰めれば当然コストと連動してより価値の高いものが適正、いやコスト安で作ることができると考えています。

生産側の現場からは、デザイン性=コスト高という考え方が大方の考えですが、決してそうではありません。
 私は長年建築の生産側に携わってきました。そこで行われていたことは、
VE(バリューエンジニアリング)と称してただコストを切り下げるために、
やるべきものをやらない、仕様を変えグレードダウン、これはほんとうのVEではありません。
VEValue Engineering)とは、製品やサービスの「価値」を、それが果たすべき「機能」とそのためにかける「コスト」との関係で把握し、システム化された手順によって「価値」の向上をはかる手法です。

 VEでは、製品やサービスの果たすべき「機能」をユーザーの立場からとらえて分析し、その達成手段について様々なアイデアを出します。
 それらのアイデアを組み合わせたり、さらに発展させた上で評価し、最適な方法を選択します。これがVEの基本的な考えです。
ですからデザイン性を突き詰めていくと当然VE手法と同様の結果が得られるわけです。
決してデザイン性=コスト高とはならないのです。
もちろん設計事務所側、設計者側の問題も大きいことは否定できません。
コスト意識の無い設計、ユーザーが求めているコストと、機能そしてデザイン性を整理できない、
技術力不足、設計者は生産者と同等もしくはそれ以上の技術力が無ければ消費者が求めている要求を実現できないわけです。
設計事務所、設計者の責任は大変重いと思います。
 今の建築の教育現場において実務を念頭にしたマネージメント教育は、ほとんど皆無といってもいいのではないでしょうか。どうしても建築家として
華やかな一面だけがクローズアップしていて、これから建築を目指そうとしている人たちに実務とあまりにかけ離れた教育がなされているような気がします。
ですから今生産現場に携わっている建築家は、実務即した技術力、経験を高め建築が本来持っている意味を強く世の中にアピールする使命があると思います。当然消費者にもそのことを広く知らしめていく責務は重いと思います。


2、 デザインとコストの関係

前述したようにデザイン性を追及していくことはコストと密接な関係があると述べました。ではどのような関係性があるのかをここでは述べて行きたいと思います。

 コスト削減の常套手段として、たとえばハウスメーカーなどは、デザインの単純化大量発注が可能な物、色、形等の種別を少数にするこういったことでコスト削減を実現してきました。
この方法もある種の効果はあると思いますが、たとえば自動車にしてもコストと多様な消費者のニーズにどのように対応するかは永遠の課題として、追及し続けています。同じ車種でも何十種類と色、機能を変えまたオプションも多様に作り販売しています。その結果として今日の自動車産業の好調さを裏付けるように消費者に受け入れられています。
 では住宅はどうでしょうか。家はその個人の個性がもっとも顕著に現れるものだと思います。建てる側の思い、夢、かかわる人々のライフスタイル、そのどれをとっても同じということはありえないと考えなければなりません。
まして、建築の特性である現地一品生産、土地が無ければ家は建てられないわけで土地は唯一その場所の存在しほかには無いということです。
 ですから当然その上に建てられる建築物はその土地の持つ特性に左右させるわけです。隣同士でも多くを共通と考えることはありますがまったく同じということはありません。そこにはおのずとオリジナルのデザインが存在します。
 そのデザインはそれを使う人、特に施主にとって気持ちのいいものでなければデザインの意味がありません。また生産者側にとってもコスト品質を保ちやすいものでなければこれも意味を成さなくなります。

 これは、今欧米で行われているデザインビルトの住宅アレンジ版と考えていいのではないでしょうか。デザインビルトは単に設計施工一体発注ということではなく、
施工性、コストパフォーマンスを考えて設計していき、そして施工中の監理、監督も生産手法まで一貫して責任を負うということだと思います。もちろん責任分担をジャッジすることも責任を負うことになり、これはまさにオープンシステムの手法そのものではないかと思います。

 ではデザインとコストがどのように密接な関係にあるか、検証していきたいと思います。
これは私が4年前に建てた物件ですが鉄骨3階建て外壁ALCア
100 吹き付けタイル仕上げです。そこで、はたと困ったことはALCの場合開口部のサッシはALC用サッシを溶接で取り付ける場合が普通です。
 また住宅用サッシを取り付けようとした場合どうしても木を廻したりして、コーキング目地が広くなります。しかしALC用サッシには住宅用にあるような性能を求めようとしても特注で作らなければならないし、コストは大変高くなります。
 では住宅用サッシをALCサッシのように溶接で取り付けられないか、とメーカーと打ち合わせをしました。そして東京でそういった事例があると聞き、資料を取り寄せていろいろメーカーの技術と検証して、特殊扱いにはなるけれども住宅用サッシにフラットバーを回りに取り付けそれをALCの溶接する方法を考え、そして図面化をして製作、取り付けにいたりました。出来映えは見事にALC外壁に住宅用木造サッシが取り付けられています。

これはまさにデザインビルトの典型であると思います。設計者自らが、デザインと施工方法そしてコストを抑えながら設計していく手法そのものです。
 これは特殊なケースではなくあらゆる面でこの感覚が要求されるのが、デザインビルトでありまたOS設計者に求められるCMrとしての資質、力量です。
今までですとこのようなデザインのサッシをつけたいと考えても、工務店に相談して、工務店はメーカーに持ちかけその結果できるがコストがかかると返され、その反論もできないまま工務店主導で建物ができていきます。これではせっかくお客様から求められているデザイン性は満足のいくものには決してなりません。 私が昔ゼネコンで現場管理をしていたとき、大手設計事務所の監理でしたが、その当時かなりな年配の方でした。いろいろと事ある毎にどのような目的でこのデザインがされているか、施工方法はどのようにするか、そして顧客満足度は
100%かと日日議論を繰り返していました。そのときにこの監理者がおっしゃっていたことは若い意匠デザインの設計者は作り方を知らずに設計している。

だから私たち監理するものがそのデザイン性を熟知し、いかにして実現するかを研究して、施工側に的確に伝えることが私の仕事であるし、建物を作るということは一つ一つのこういった作業の積み重ねにある、といわれていました。建築士たるもの施工を知らずして設計するなと口うるさく、施工者側にもかなり厳しく要求もきましたが、施工の方法答えは常に用意していてこちらが目的の答えを出してこないとこうしてやればできると示されたものです。私も悔しいのでいろいろ研究し、調べこうしたらもっとよくなるはずと提案アイデアを常に考えさせられたものです。しかし、この熟練度が品質につながるわけで、建物の良し悪しは監理するものの力量に左右されることは、間違いのないことだと思います。そこにもやはりコストを常に意識して、デザインの目的、美的な要素を熟知して実現にこぎつける高い技術と、熟練度が私たち建築士に求められる、社会からの期待、要請されることなのではないでしょうか。端にコストダウン手法を真似していくのではなく、建築士としてのデザインコストを求めていかなければならないと思います。


3、コストの分析手法

建築士に特に設計作業に携わってきた人間にとっては、コストとデザイン設計をつなげるのは非常に厄介なことです。こんなデザインを考えても本当に出できるかどうか、予算はオーバーしないかどうか、頭の痛いとこです。ましてや、世の中の実勢価格の把握など非常に困難なことです。
 しかしここで建築というもののコストの成り立ちを考えて見ますと、案外難しいことではなくなるかも知れません。建築コストの構成はどのようになっているでしょうか。コストを把握するためにはまず
建物を構成する項目にどのようなものがあるかを考えなければなりません。そしてその項目に従ってどのように細分化され、細分化された項目がどのように積み重ねられて、ひとつの建物として出来上がるかがポイントになると思います。

 工事費の構成を表すには、工事種別による分類と、部分別による分類とがあります。大規模工事、公共工事など一般的な区分では工事種別ごとの構成分類がほとんどですが、小規模、住宅程度のものでしたら部分別に分類したほうがまとめやすくコストも把握しやすいので部分別構成用いて分析していきましょう。

 別紙1にあるように、部分別構成表を見ていただければわかりますが、建物を作る時必ずどこかの項目に当てはまる工事が行われています。それと把握しなければいけないのは図面にかかれていない部分、例えばある物を取り付けるのに必要な部品、作業、これも知っておかなければなりません。それぞれが必ずどこかの項目に当てはまるか、当てはめて考えなければ、建物を作る組み立てる作業はどこかでストップしてしまいます。

 また品質が確保されないまま進んでしまうかのどちらかになってしまいます。

概算段階においてコストを如何に掴むかが今回の大きなテーマですが、ここで建築コストを初期段階で掴むいくつかの手法を紹介しましょう。

@、積み上げ概算法

実施設計の見積もりでは、細目ごとに積み上げ積算を行いますが、これに対し積み上げ概算法は、科目を単位として大づかみに積み上げる方法で、最も多く使われます。科目は部分別内訳の大・中科目が使われ、科目ごとに数量数値と、これに対応する科目単価によって計算します。

A、条件対応法

例えば木造2階建て住宅として費用を考えるとき、まずその建物が持つ標準価格(事務所ごとの)がありその標準に対していくつかの条件の違いが働いて価格が変わっていくと考える方法です。その変動はやはり科目(一般に大科目)ごとに捉えそしてコストが変動する要因を科目ごとに数項目設定します。そしてその項目ごとにさらに数要因を設けます。各条件は標準値を1とする係数(1.20.8など)で示しておき、各概算科目は総額を100とする標準ウェイト(科目の比率)で表し、このウェイトを指数といい、指数に対して対象要因ごとに条件ごとの係数を掛けて新しい指数を求めます。このようにして全科目の指数を求めて合計すれば標準指数100に対する対象建物の設計指数が求められます。標準価格に対象建物の指数を掛ければ総額が求められます。

  B、コストウェイト法

建築費は共通の科目に分類すると、建物の種類ごとに各科目の比率がほぼ一定となる性質を持っています。この性質を利用して総額を概算する方法です。各科目の比率が標準化するためにはより多くのサンプルが必要となります。似たようなサンプルを同じ科目に分類することにより比率の精度は上がります。


その他に実績統計法、実例調製法などがあります。

  
 このように概算コストを求める手法はある程度確立された方法がいくつかあります。
住宅のように小規模建物の場合どの方法を使うかは設計者の選択ですが、どの方法でも一番のコスト決定要因は建築主の思い入れと、設計思想によることがコスト決定要因の最大因子です。思い入れとは何か、もっともコストに多く跳ね返ってくる思い入れコストは、その建物のグレードにあると考えられます。
 例えば同じ規模でも外壁にサイディングなのか、吹き付け塗装なのかそれともタイルを張るのか、やはりグレードによって大きく違いが出てきます。そして設計思想、自然素材にこだわり天然素材を多く使用する場合とそうでない場合、おのずとかかるコストは変わってきます。

  当初の施主の予算額と建物グレードをどうマッチさせていくかが設計者に求められ る能力なの ではないでしょうか。私は目標値として概算予算と実際発注された総 額の違いを5%以内に抑えることを目標とし、実際実現しています。


4、CM=分離発注?

CM(コンストラクションマネージメント)に関する論文なり書物は最近たくさん出ているのでここでは説明を省いて、コストコントロールと分離発注という観点から論旨を進めていきたいと思います。

建設設工事原価とは、純工事費+工事管理費+工事関係諸経費となります。
又、純工事費は、建設工事の請負遂行に直接的に必要とされる原価で、直接工事費 と共通仮設費から成ります。工事管理費は、工事現場の維持・管理に必要とされる 原価です。一般的には、建設工事原価は、以上の純工事費と工事管理費から構成さ れるものですが、この他、設計費・保証料等、当該工事との関係が個別的に発生するその他の費用を建設工事原価に含めることがあります。
 では純工事費を工事種類別(工種別)に把握するには材料費、労務費、機械費、経費、外注費をそれぞれに部分別に区分して把握し発注段階でどの工種で発注するかを掴む必要があります。例えば木工事の場合、材料として構造材、造作材(内法材)一般建材、特殊建材、補足材、金物、くぎ、接着剤、養生材などがあります。
 これらが材料費となります。それに対して労務費として、構造建て方費、内部造作費などがあります。
機械費(建て方用レッカー代等)、外注費(加工費、プレカット費等)経費となりますが、経費の部分の細分化も必要でその中で考えておかなければならないのがいわゆるフィー(利益部分)です。
 たいていの場合は諸経費という項目で計上されている場合がほとんどですが、各工種発注先ごとにどのように計上するかで、コストの幅が違ってきます。一番大事なことはどんな仕事も原価と利益があるということを考えておかなければいけないということです。ですからコスト調製をするときに、原価割れを無理強いすれば当然そこには、無理が生じ品質にも影響が出てくる可能性があります。コストとフィーを明らかにし、価格をガラス張りにすることは、コストコントロールがしやすくなります。しかし今までの日本の場合、利益を明らかにする商習慣はなく、どうしても原価(コスト)の中に隠れているのが現状ですし、顧客もズバット利益
15%といわれるとなんとなくえ!こんなにとるのと思ってしまうのが現状です。

 それと最近の消費税の表示についてもコストにかかわってきます。以前は大体外税方式がほとんどで、内税でかかれてあるケースは建設資材では余りありませんでした。しかし最近は法律の改正で、内税で価格を表示しているものも少なくありません。建設価格の場合販売先が限定されているので外税方式で表しても問題はないので、コスト調製も外税のほうがやりやすいという観点から、私は外税で表しています。

 いずれにしても、コストコントロール、予算管理は管理する側がいかにして実勢原価を掴みそして、適正価格で発注できるかがコストコントロールする上で一番のポイント地なります。必要なポイントに当てはまったデーター収集如何に大事であるかがおわかりになると思います。ただデーターを集めるのではなく、発注項目を一元化して比較検討しやすく、分析しやすいデーター収集でなければなりません。 

別紙に大工工事の内訳明細書を参考掲載しておきますので、皆さんも今まで行った物件の単価を当てはめてみてください。そうするとおのずと自分の傾向が見えてくるはずです。そして自分の原価も見えてくるはずです。

分離発注で各工種ごとに価格分析ができていけば、概算予算もだんだん絞れてきま す。分離発注でなくても、一括発注の工務店見積もりで総額部分だけ見るのではな く、項目に当てはめて見直してみると多分隠れていた価格も見えてくるはず。

  分離発注の経験が少なくコストがわからないという前に今までにやった物件の価格  を検討してみるのも初心者には有効だと思います。

  コンストラクションマネージメントの主な業務のうちコストコントロールについ て述べてきましたが、分離発注することとコンストラクションマネージメントとの 関係性をここで考えていきたいと思います。
 私たち設計監理者は本来自分たちで設計した建物が設計図書どおりできているかど うか、確認することも監理と言う業務の中で重要な仕事です。そしてそれが建物の 品質を保つ大きな要因です。
  では設計とは何であるか、以前に書いた論文の中で述べたと思いますが、広辞苑 いわく「目的物(ここでは住宅)を具体化する作業で、製作。工事などにあたり、 工費・敷地・材料及び構造上の諸点などの計画を立て図面その他の方法で明示する こと」とあります。設計の重要な要因の一つに工費など実際に建物を作るために必 要な要素をすべて計画しなければなりません。もちろん様々な諸条件、法規的なも の、構造的なもの、敷地の条件など、それぞれの用件を鑑み、要求された内容を満 足するように計画し図面化、その他で明示しなければなりません。そして明示され た内容と実際現地とが符合しているかどうか、設計の意図が十分反映されているか どうか、チェックをすることも設計という概念の中に入っていると思います。

  現在の建築生産の中で設計者の役割は矢もすると見栄掛かりの部分にとらわれ、 実際のディティールコストは施工者に任せきりにしてきたと思います。もちろん複 雑な建築プロジェクトの場合、分業化は仕方のないことですが、日本ではそれを分 業するのではなく一括してひとつの会社が請け負う場合がほとんどです。一括で行 った場合の長短は何処にあるのでしょうか。ビルなどプロジェクトが複雑で多数の 人材が必要になるケースは又いずれのこととして、住宅建設等比較的少人数で可能 なプロジェクトを検討することにします。少人数といっても専門工事の数は一人前 にあります。

  では分離発注で行うメリットをいくつか上げて見ましょう。

@      施主や設計者の思いを施工者、特に専門職人に直接伝えることができる。

A      専門工事の立場から適切なアドバイスを提供できる。

B      専門工事業者は施主の顔が見えるので、金額以外のやる気、サービス

   誇りある仕事を提供することができる。

C      仕事の責任範囲が明確になり、前施工のチェック、後施工への引渡しなど

  今まであいまいにされてきた専門工事会社の仕事に責任を持たせることが

  できる。

D      価格の透明性があり何にどれだけに費用がかかったか明確になる。


等が上げられます。もちろんデメリットはありますが、デメリットよりもメリットのほうが上回っているので、最近では公共工事も分離発注方式でやられるケースも増えてきています。

 そしてコンストラクションマネージメントの立場からも設計品質を的確に施工者に伝えるためにも分離発注方式のほうが直接伝わりやすいのです。

ただ、施主はほとんどの場合建築に関しては素人です。そこで建築生産の管理を行う立場のCMRという概念が生まれてきたのです。大きなプロジェクトの場合、CMRは設計とは別に契約を結び、設計、監理もCM対象として扱う項目になっています。しかし、ここでは小規模工事に絞って論じているので次の章で取り上げる、設計者がCMRを兼任し設計者がCMRとなってプロジェクト全般を統括する方法も、CM方式の活用法のひとつではないかと思います。


5設計者がCMを行う

最後の章として設計者が行うCMについて触れたいと思います。前述したように大型プロジェクトの場合設計者がCMRとなることはほとんどありません。
あくまでも施主から委託されたCMRが存在して、機能、デザイン、コストなど建設プロジェクト全般を統括します。
 ですからCMRに要求されるのはプロジェクトの内容をすべて把握しなければいけません。また、プロジェクトそのものの実現性のキーマンとしてあらゆることに精通していなければなりません。ですから大型プロジェクトの場合CMRも組織として機能しなければ個人の力では限界があります。
 では設計者がCMRとして、建設プロジェクトを統括できるのでしょうか。
ここで設計監理業務について触れたいと思います。特に工事監理について建築士法第2条「その者の責任において、工事を設計図書と照合しそれが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう」及び第21条に「建築士は、設計及び工事監理を行う外、建築契約に関する事務、建築工事の指導監督、建築物に関する調査または鑑定及び建築に関する法令または条例に基づく手続きの代理等の業務を行うことができる。」と規定されている。つまり建築士は設計と工事監理のほかに契約に関する事務、工事の指導監督も行うとなっています。
設計者が
CMを行うこと、特に完全分離発注型のピュアCMといわれる方法をやろうとすると、現行法規上疑問がある部分はありますが、ここでは住宅などの小規模工事が中心ですので、法規上の問題点はないものとして進めていきます。CMRは前述のようにプロジェクト全体を統括し、そして施主の思い入れ、をどのように実現させるかは重要な仕事です。ですから設計者がCMRをやることもあながち不自然ではないように考えます。住宅などの設計には施主とのかかわりは、家作りを思い浮かべたときから設計者とかかわりを持つようになります。もちろん一般のハウスメーカーや、工務店で家を建てる場合でも、最初から営業やら設計担当者が施主と係わり合いを持ちます。そしてプロジェクト全体を統括していきます。

 しかしここで大きな問題なのは、作り手と施主の代理として品質管理してチェックする側が一緒であるということです。やはりチェックする側が作り手の範疇にいるといいことは、そこのモラルハザードが生まれる種を作っているようなものです。ここで一番大事なことはあくまでも施工者とCMRは利害を一致させないことが重要です。ですからCMRは施主から第三者として委託を受けたものが行うことが重要です。小規模特に住宅程度で新たにCMRに委託することは、いい方法ですがそれを専門に行っている業種はなく、唯一その任に当たれるのが設計者となるわけです。ですから設計者は高い倫理観を持ちあくまでも施主から委託を受けた第三者として作り手に対してマネージメント業務を行うことができるのです。


6、まとめ

 設計事務所のCMというテーマで話を進めてきましたが、現在の建築工事における設計事務所の役割、立場は非常に脆弱で、本当に消費者保護のために資格を持って、チェック機能を果たしているかどうかはなはだ疑問に思います。
現在建設業界においては構造改革的にCMの導入ということが盛んに謳われていますが、現行法の中で日本型CMなどと称して、今までの請負方式と変わらない、むしろ設計施工一体型に向かっている傾向が見受けられます。
CMはあくまでも消費者の立場に立ってコスト、フィーをきちっと明確にして、あくまでも第三者として工事全体をマネージメントしていくことが本来です。ですから欧米で行われていたことと同じように、分離発注型のCM方式以外の方法では、CMを行っているということにはならないのです。

  設計者がCMを行うことによってより価格と性能が密接に捉えられることが、消費者の立場でのCMといえるのではないでしょうか。そのためには設計者自ら襟を正し、そして本来あるべき姿を消費者に判ってもらう努力もしなければなりません。いつまでも価格のわからない設計者でいいのでしょうか。施工技術のわからない設計者でいいのでしょうか。少なくとも住宅の設計に携わるものは、すべてをマネージメントできる技量を身につけたいものです。

    


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